磁気共鳴専門技術者 性能評価 スライス厚測定

磁気共鳴専門技術者試験

日本磁気共鳴専門技術者(JMRTS)の性能評価試験の1つとしてスライス厚測定試験が設けられています。なかなか理解が難しい内容ですが、可能な限り分かりやすく解説します!

スライス厚測定の基本原理

スライス厚測定で一番難しい基本原理です。ここを理解しておくことで後の筆記試験にも役立つのでなるべく分かりやすく解説します。

スライス厚はスライスプロファイルの半値幅として定義されます。以下の図で理解すると分かりやすいかと思います。

すなわち傾斜角:α長さ:Lが分かればスライス厚を算出できるということになります。

また実際に撮像した画像からスライスプロファイルを算出するには以下の図のように、測定した信号強度を微分して算出する必要があります。

ただし、この計算方法は測定するファントム自体が傾いていないことを前提として計算されています。したがって後程、ファントムの傾きによる誤差を計算式によって補正する必要があります。

使用ファントムについて

使用するファントムは以下の図のような二つのくさび版が交差したファントムを使用します。

くさび板が2つ必要な理由としては、前述した傾きによる誤差を補正する必要があるためです。

傾き誤差の補正について

ファントム自体がスライス面に対して傾きがある場合は、以下の図のように回転誤差となる角度θを算出することができる。

この回転誤差θを利用して真のスライス厚:Dは以下の次式で表すことができる。

このようにしてファントム自体が傾いている場合は、傾きθを算出した後に元のくさび型の角度αに加算して真のスライス厚を算出する必要がある。

スライス厚測定の具体的な手法

JMRTSのHPでは均一ファントムによるスライス厚測定試験について以下のように記載があります。(読むのが面倒な方は下の要約までとばしてOK)

1)標準的なNEMA法に準じて、ウェッジ法を用いて測定を行う。(スラブ法を用いる場合は明記すること)

2)2枚の楔型三角錐が交叉したスライス厚測定用ファントムの使用が望ましい。

3)測定ファントムの信号発生領域を模式図に記載する。

4)撮像条件
・SE法を用い、マルチスライスで撮像を行う。
・マルチスライスで少なくとも3スライスは撮像を行い、スライス間距離が予想される半値幅の2倍以上であること。
・TR≧3×T1、スライス厚とTEは一般的に臨床に使用される範囲。
・★十分なSNRを担保すること。

5)測定に際しコンピュータソフトを使用してもいいが、結果は測定方法とともに、得た数値の根拠となる計算式を表示する。

6)楔形三角錐がひとつしかない場合や、当該ファントムを持ち合わせていない場合は、ファントムを作成もしくは独自な方法で求めてもよい。独自な方法を用いる場合は、信頼度を記す。

色々書いてありますが、簡単に要約すると…

  • ウェッジ法で測定を行うこと
  • 2枚の楔型三角錐が交叉したスライス厚測定用ファントムの使用もしくは自作すること
  • SE法で3スライス撮像すること
  • 十分長いTR(800ms~)、短めのTE(10~20ms)を用いること
  • レポートには計算式、計算に使用したソフトを明記すること

という認識で大丈夫かと思います!私はファントムについてはメーカー提供のファントムを使用しました。

撮像手順・測定方法について

撮像手順について

  1. ファントムをコイル中心に配置します。撮像前に15分程度放置します(ファントムの安定化)。傾きの補正を簡単にするために、可能な限りファントムは寝台に対して水平に設置します。
  2. 撮像位置をファントム中心に設定し撮像を行います。※中心周波数やゲインなど変化しないように注意

測定方法について

1. 撮像したくさび型ファントムに対して矩形にROIを設置し信号値を測定します。※今回はImageJを使用します。

2. 測定した信号値に対して加算平均処理を加えます。※今回は測定値はExcelにコピーペーストしています。

3. 加算平均処理した値を微分し、微分した値をグラフにプロットします。

4. これを2つのくさび型に対して実施すれば測定は終了です。

レポートの記載方法

スライス厚測定が完了したら、結果をレポート(報告書)にまとめます。レポートには以下の項目を盛り込みます。

  • 基本情報(施設名・氏名・使用機器など): 自分の所属施設名や氏名、使用したMRI装置の名称・機種など。
  • 題名: くさび型ファントムによるスライス厚測定試験レポートなど
  • ファントム: 使用したファントムの種類・形状・大きさ内容物、およびT1値・T2値を記載します。
  • コイル: 使用した受信コイルの種類を記載します。
  • 撮像条件:使用した撮像パラメータ(TR、TE、スライス厚、FOV、マトリックス、NEX、バンド幅、室温など)を具体的な数値で記載します。
  • 測定方法: スライス厚を測定した手順や工夫した点を記載します。例えば、以下のように書くことができます。
    • ファントムをMRI装置内に設置後、10分以上待機してファントムを安定化させた。
    • NEMA法に準じたウェッジ法で測定した。
    • 解析にはImageJおよびExcelを使用した。
    • スライス厚は計算式○○を用いて算出した。
    • 測定の信頼性を確保するためにSNRを測定した。測定したSNRは○○であった。
  • 考察:測定結果からファントムの角度との差について考察する。

まとめ

以上がスライス厚測定の解説になります。

また実際に私が試験に合格した際に使用したレポート、撮像条件については知りたい方は有料ではありますが以下に記載しておきます。購入して頂けますとサイト運営の励みになります!

以下に過去レポート・撮像条件詳細を添付します。

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